明日が楽しみになる日記

おっちょこちょい、人見知り、小心者のこっこが好奇心だけで世界を旅します。

自分の中の嫌な自分

台湾で過ごす最終週。私は、今回の台湾滞在で一番お世話になったホストファミリーの元、元気に過ごしていました。その日は、放課後ホストファミリーと待ち合わせてお出かけする約束をしていました。待ち合わせはMRT緑色の線の終点、新店駅です。無事に駅で落ち合った私たちはホストファザーの運転する車で途中ホストマザーの実家に立ち寄ってから、烏来(ウーライ)に遊びに行きました。

烏来はガイドブックにも必ず載っている、有名な温泉地です。滝を見て、トロッコ電車に乗って、綺麗な景色の中お散歩をしました。

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駅前までの道沿いには観光地らしく、屋台が並びます。ホストマザーは、小柄で細い体のどこにそんな食欲があるのというくらい食べることを楽しむ方で「こっこ、これも食べよう。あれもおいしいよ。」と次々に屋台の中から食べるものを選んでいきます。

その日、私は初めての烏来を心から楽しみました。初対面の日に一日遊びに連れて行ってくれた帰り道同様、ホストファザーは「こっこ、うちに着くまで寝てていいよ」と優しく言ってくれました。初対面の日はそれでも緊張していて眠れなかった私ですが、その日はお言葉に甘えて後部座席でホストマザーと一緒に眠りました。

家についてしばらく経つと、ホストファミリーのおうちに日本人のお客さんがやって来ました。可愛らしいその人は私を見て「ニーハオ」と小さな声で挨拶しました。彼女はだんなさんのお仕事の都合で1年前に台北にやってきたそうです。市場で買い物をしている際に中国語のやりとりに困っている彼女を見かねて、偶然居合わせたホストマザーが声をかけたことで知り合いになりました。それ以来、こうして時々中国語を教わりにホストマザーの家を訪ねてきているそうです。私は小一時間ほど彼女とホストマザーと一緒にお茶をしました。でも、そのうちになんだか心の中がもやもやしてきて「ああ、私明日の学校の宿題しなきゃ」と言って自室に戻りました。

部屋に戻ってからも、宿題の内容はあまり頭に入って来ませんでした。どうして、もやもやした気持ちになるのだろうと考えてみました。嘘偽りなく、そのとき思ったことを書きます。「1年も台湾にいるのに、どうして彼女の中国語のレベルはこの程度なのだろう」と、そのときの私はそう思ったのです。彼女とホストマザーの会話はほとんどかみ合っていなくて、途中でホストマザーが日本語で助け舟を出して、彼女が筆談で確認してという感じでどうにか進んでいました。彼女はとっても可憐で、控えめで、謙虚でした。一方で中国語を学びたいんだとか、台湾という土地に慣れなきゃとかいう必死さみたいなものは伝わって来ませんでした。

私は「もったいないよー」と思ったのです。1年間、彼女は専業主婦として台湾で生活してきました。そこに、ホストマザーのような親切な人に出会って中国語を教わる機会を得ます。私が台湾で過ごせるのは1ヶ月。私が彼女の立場なら、もっともっとこの1年という時間も、ホストマザーとの出会いも大切に中国語の学習に充てるのにと。

私は自分のその嫉妬にも似た苛立ちのような感情に戸惑いました。私が旅をしてきて学んだことのひとつは、人をジャッジしないことだったはずです。どんな自分でもいいんだと信じること。自分のありのままを認めること。それと同時に多様な価値観に学び、他の人をジャッジすることなく受け入れること。それをこれまでの旅で見たもの、触れあった人から教わってきたはずです。

なんだかこの日、久しぶりに自分の中の嫌な自分をみた気がしました。そのときのほろ苦い気持ちを、日本に帰ってきてからもときどき思い出すのです。